宇宙開発利用大賞とは
我が国の宇宙開発利用推進に大きな成果を収めたり、先導的に取組んだ事例に対し、その功績をたたえるもので、今回は第2回目にあたります。
山口大学清水教授とshamen-net研究会が研究開発した計測技術と、計測情報サービス(shamen-net)が、防災・減災分野に大きく貢献したとして、国土交通大臣賞を受賞いたしました。
受賞事例の概要
受賞者は、地盤や構造物の変位を3次元で高精度に計測するため、安価なGNSSセンサの開発、
計測誤差処理技術の確立、WEBによる自動計測システム(shamen-net)の開発を行うとともに、GNSS計測変位情報をインターネットを通じてリアルタイムに提供するサービスを確立した。
その結果、斜面や地盤の安定性監視、ダム等大規模構造物の維持管理、建設工事の情報化施工等の実務での利活用が進み、この高品質な変位計測監視技術は防災・減災に大きく貢献している。
受賞ポイント・具体的成果
1.市場拡大への貢献
2001年のサービス提供開始以降、防災分野や構造物の維持管理分野をはじめとして、多種多様な現場で適用が拡大した。その数は15年間で累計約300現場に及び、衛星測位技術の利活用拡大に貢献してきた。近年の災害頻発・激甚化や、著しく老朽化が進む社会インフラへの対応などを背景に、今後も本サービスの貢献が大きく期待されている。
2.産業、生活、行政の高度化及び効率化への貢献
- 地すべりや道路斜面の管理者は、計測情報を災害リスク把握に利用し、警戒避難・通行止等の早期判断や予防保全型の維持管理に活用している。
- ダム管理者は、計測情報をダム堤体の安全管理に利用し、地震・洪水時等の堤体安定性の判断に活用することで、安全管理の高度化を実現している。
- 建設工事の施工者は、計測情報を情報化施工に利用し、施工に伴う斜面や地盤の不安定リスクの早期検知や、品質向上・施工合理化などに活用している。
現場設置例
土砂災害現場 | フィルダム堤体 |
3.技術への貢献
計測専用のGNSSセンサ開発や、三次元変位を最高1-2mmの精度で検知する誤差処理技術、WEBを用いた自動計測システムの開発等の研究開発成果は、市場拡大だけでなく国際学会における推奨法や技術指針等に編纂され、我が国の宇宙利用技術発展に大きく貢献した。
4.普及啓発への貢献
サービス開始当初、GNSS計測は精度が悪く、地盤や構造物の変位計測には不向きというイメージが浸透していた。そこで、shamen-net研究会主催のセミナー開催や、各種学協会のシンポジウムや論文発表・機器展示等を精力的に継続し、多数のユーザーにGNSS計測の利点を普及させることに成功した。